研究内容

 

高速イオンと表面の相互作用の解明最近の成果

加速器で作り出される高速イオンは、高精度の表面分析や表面改質、新物質の合成などに利用され、ナノテクノロジーを支えています。これらのイオンビームを利用した技術の開発には、高速イオンと物質表面の相互作用を理解することが必要です。

本研究室では、物質の表面にすれすれの角度でイオンを入射させ、イオンが物質中に入らずに反射される現象(イオンの鏡面反射)を利用して、高速イオンと表面の相互作用を研究しています。

図-1はイオンが物質の表面で反射するときに生じる種々の現象を模式的に示しています。イオンの大角散乱、物質原子のはじき出し、イオンと物質の間の電子のやり取り、2次電子の放出、核反応などが生じています。これらの現象の理解は、次項で説明しているイオンビーム分析などのイオンビームを利用した応用技術の基礎となります。

高分解能RBS法の開発と超小型化に関する研究最近の成果

ナノテクノロジーにおいては、サブナノメーターの分解能を持った原子レベルの分析手法の開発が求められています。

本研究室では、非破壊的に組成分析・構造分析が可能であるラザフォード後方散乱法(RBS法)を改良して、その深さ分解能を従来の10nm程度から0.2nmにまで高め、世界で初めて1原子層ごとの組成分析が可能な高分解能RBS法を開発しました。
図-2は赤外素子等に利用されるPbSe結晶の分析例です。各原子層中の鉛とセレン原子が分離したピークとして観測されています。

さらに、神戸製鋼所との共同開発により、高分解能RBS装置の小型化と商品化に成功しました。開発した高分解能RBS装置は、TMR磁気ヘッドや次世代の超LSIの開発等に利用され始めています。

現在、高分解能RBSを用いた分析を通じて、内外の企業や大学等と連携して新材料の開発を進めています。また、工場でのインライン検査等への幅広い利用を目指して、新しい分析原理による超小型化や高性能化の研究をおこなっています。

※共同利用に関するご連絡: nakajima.kaoru.4a(アット)kyoto-u.ac.jp高分解能RBS装置共同利用規程

薄膜のナノ形態の制御とその応用に関する研究

最近の成果

詳細

真空蒸着法によって薄膜を作製する際、基板を蒸発源に対して斜めに配置しておくと蒸発源の方向に傾斜した微細な斜めコラム構造が形成されることが古くから知られています。最近この斜め蒸着の際に基板の傾斜角や面内方位を変化させる「動的斜め蒸着」によって、螺旋やジグザクなどの複雑な3次元形態を形成できるようになりました。

動的斜め蒸着によって形態を制御された薄膜は、その形態に起因する光学的、磁気的、機械的異方性を示します。本研究室ではこれらの「かたち」に特有な性質を光学素子、マクロマシン、触媒などへ応用することをめざした研究をおこなっています。

図-3は、動的斜め蒸着法によって作製された複合形態を持つTa2O5薄膜の電子顕微鏡像です。動的斜め蒸着法を用いればリソグラフィやエッチングを用いなくてもこのような複雑な形態を作製することができます。

図-1 イオンが物質の表面で反射するときに生じる種々の現象

図-2 PbSe結晶の高分解能RBS測定例

図-3 動的斜め蒸着によって1度の蒸着で複雑な形態を作り込まれたTa2O5薄膜の電子顕微鏡像

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